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【あの人は今こうしている】
2005年6月7日 掲載
野路由紀子

「“再婚するなら、オレでどうだ?”ってクドかれたこともありましたねえ」

 可憐、素朴で土の香りがするような女の子だった。五木ひろし、小柳ルミ子、尾崎紀世彦、野口五郎、シモンズ、南沙織などその後の人気歌手が数多く輩出した昭和46年、この人もデビュー曲「私が生まれて育ったところ」を大ヒットさせた。野路由紀子さんだ。実力派演歌歌手と期待された彼女はそれからもヒット曲を生んだが、次第に表舞台から消えていった。今どうしているのか。

「ワタシ、最初から出直すつもりっていうか、もう一度、歌一筋でやっていこうと決意しました。よろしくお願いします!!」
 JR渋谷駅近くの喫茶店で会った野路さん、こういって頭を下げた。赤いワンピースが、色白の肌を引き立てている。
「きょうの取材は営業の一環だと思い、気合を入れてお化粧してきました、ハハハ。実はワタシ、歌手活動はずっと続けてきたんですよ。“自分は現役の歌手だ”って自負心が生きていく支えでしたから。もっとも、お店をやってたでしょ。休むわけにいかず、営業は日曜日や休日だけとか、正直、思うように活動できなかったんです」
「お店」とは平成7年、自由が丘に開いた「スナックゆらり」。
「大変でした。だって、お料理はすべて手作り。張り切り過ぎ、忙し過ぎで倒れ、入院騒ぎを起こしたこともありました。それでも、お客さまに恵まれ、10年できた。ただ、お店っていうのは3年周期でお客さまの入れ替わりがあって、10年も経つと常連の方もおトシをとられて……。そんなこんなを考えたら、このあたりが店を閉める潮時かなって感じるようになり、今年2月、思い切って店を閉めることにしたんです」

 さて、福井県出身の野路さんは高校を中退し、歌手を目指して上京。昭和46年、デビュー曲の「私が生まれて育ったところ」がいきなりヒットしたのに続き、47年に「北信濃絶唱」、48年には「嫁入り舟」と毎年コンスタントにヒットを飛ばした。
「ところが、その後は悪戦苦闘で、っていいたいんでしょ、ハハハ。63年に出した『しのび宿』はそこそこ売れたんですよ。まあ、今の時代、とくに演歌をヒットさせる難しさは十分理解してるつもりです。だけど、お店のお客さまには野路由紀子を応援して下さる方がたくさんいらっしゃったし、たまたまお店をやめようか迷ってるとき、田舎の母に電話したら、“今、おまえのファンだという方が訪ねて来てる”っていうんです。これにはビックリすると同時に、すごく勇気づけられました」
 目下独身。つまり、結婚歴はアリ。
「ヘンな色気がないから、10年もお店がもったんですよ。だけど、“再婚するなら、オレでどうだ?”ってクドかれたこともありましたねえ、ハハハ」
 ひとり娘は歌手を目指しているそうだ。
「福井から上京したときは、“歌手になれるなら死んでもいい”っていうくらいの思いだった。その気持ちを思い出し、小さい頃からの志を今度は完全に遂げたいと考えていますので、本当によろしくお願いします」



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