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【HOT Interview】
2007年12月1日 掲載
メガヒットメーカーが初の長編小説を上梓 樹林伸氏に聞く

「人間、底を打ったときこそ不思議な力が湧いてきます」

「金田一少年の事件簿」「サイコメトラーEIJI」など漫画界でメガヒット連発の原作者が、初の長編「ビット・トレーダー」(幻冬舎 1700円)で小説界に躍り出た。オンライン証券売買での暴利を稼ぐ男を主人公に、家庭の崩壊・再生をテーマとした冒険ストーリーだ。

――突然の事故で最愛の子を失った夫婦同士が憎みあう。その狭間で生き残った子が行き場を失い、家の外の世界をさ迷い出す。日常の、いわばどこにでもある家庭崩壊を背景に、主人公・恭一がのめりこむデイトレードの世界で、闇社会との闘争に追い込まれる。
「僕の初めての長編小説ということで、これまで書かれていない世界を題材にしようと。デイトレードの世界は、ここ10年急激に個人投資家の口座数が増えており、しかも今の若者たちを異常にひきつけてもいる。そして何が起こってもおかしくない。そういう危うい世界が現実にあること自体、書くには格好の題材だな、と思ったわけです」
――一方で、金を挟んだ男と女の純愛、強欲、策略が縦横に展開する。この小説を読むと、今の都市部で暮らす日本人の家庭を成り立たせている“金”というもの、生活を回転させる金銭というシステムの無慈悲さをいやでも応でも実感させられる。
「この世にお金で手に入らないものはない。お金は人を救う切り札にもなる。でも矛盾しているようですが、実はお金で手に入らないものはいっぱいあって、例えば家族愛とかですね。それじゃあ、そういうお金っていったい何なんですか? と、読者の方に問いかけたかった。また現代の家庭、家族に関しても、それはいったいあなたにとって何なんですか? と、問いかけたかったわけです」
――伝説の漫画原作者として、この作品に自己を投影した部分があるという。
「人間が“底を打つ”、その打った瞬間をまさに描いているわけですが、そこですね。自分自身、同じような状況が過去2度ほどありまして、これ以上の下はないと腹を決めた時点から自分でも不思議に思えるほどの力が湧いてきた体験があります。男は悪あがきしなきゃ、男をやり損ねるんじゃないか。そこを読み取って、楽しんでいただきたいですね」
◆作品概要
 最愛の息子を電車事故で亡くして4年、幸せに満ちあふれていた矢部恭一の家庭は崩壊した。妻は家庭を顧みず外出続き。長女も外泊を繰り返し酒・薬におぼれる。そんな中、外車販売営業職の恭一自身は、息子の弔慰金を元手に始めたデイトレードでぼろ儲け。闇社会の投資話にまで手を出し、株の裏取引で破産の危機に追い込まれる。この瓦解家族に再生の目はあるのか!?

▽きばやし・しん
 1962年、東京・武蔵野市生まれ。早大卒。在学中にコピーライターの仕事を始め、漫画編集者を経て原作者として活躍する。天樹征丸の名の主な作品に「金田一少年の事件簿」「探偵学園Q」「リモート」など。ドラマ・映画「HERO」の企画原案者。他に小説に「リインカーネイション 恋愛輪廻」がある。



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