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【NEW WAVE】
2007年6月30日 掲載
第44回オール読物推理小説新人賞受賞 祐光正氏に聞く

「大地震か戦争でも起こらないかな、という若者たちの危うさを何とかしたい」

 選者の石田衣良、藤田宜永、高橋克彦氏らが、「文句なしにプロでやっていける」と絶賛した受賞作は「浅草色つき不良少年団」(文藝春秋 1476円)。祐光正氏は現役の漫画家で、初の小説発表で初受賞、即作家デビューとなった。本作では、大正モダニズムの薫り漂う昭和初期の浅草を舞台に、当時のカラーギャング団の少年少女を大活躍させている。

――好いた男の逸物を切り取って逃亡し、“希代の毒婦”と称された阿部定(映画「愛のコリーダ」のモデル)も、もとは浅草の不良少女上がりだった。神名火老人の語りはまさに当時の浅草を語ることだが、登場する浅草紅色団の頭目・小百合もその艶やかさ、きっぷ・意気地の良さで、当時の浅草の不良少女たちを彷彿とさせる。
「選考で時代の描き方にお褒めの言葉もいただきましたが、この小説では現代を見るのに過去を投影して見る、という手法をとりました。当時の不良少年少女たちの背景には、軍部が台頭し、きな臭くなっていく世相があったし、現代も防衛省昇格や憲法改正論議で急激な右傾化が見られる。両者はどこかで相通じていると感じていますし、そこに起こる怪奇な事件、それに立ち向かう人物には不良少年少女を登場させたい気持ちがありました。粋の神髄には、やっぱりどこか不良っぽさがありますしね」
――第1作“浅草色付不良少年團(カラーギャング)”は、官憲に追われた神名火少年が2つの死体が転がる密室に放り込まれる本格推理の体裁を取る。さらに屋敷の床下には殺された女たちの骸骨、腐乱死体がゴロゴロ。エロ・グロと肉欲、残虐性が絡み、最後には紅色団頭目の小百合が実は男だった! という落ちまでつく。
「それぞれの事件では、犯罪を起こす現代の少年少女を相当意識しました。描きたかったのは、僕の若いアシスタントの中には、将来には不安がいっぱいだから大地震でも起きないか、戦争でも起きないか、みたいなところがあって、やけっぱちというか、その危うさを良い方向へ昇華するエンターテインメントにしたいという思いがありました」
――語り部の神名火老人をはじめ、主だった登場人物たちは、いつかどこかで実際に出会った人物たちの匂いを感じさせる。
「僕も人生を50年近くやってきて、絶対忘れられない出会いがあります。純粋に作中人物のモデルではありませんが、そういう人たちを記録した物語でもあるんです。それが皆さんの記憶・体験に通じることがあるかもしれない。そのあたりも、ぜひお楽しみください」

◆作品概要
 浅草・不良少年少女探偵団の5作の連作集。昭和も終わりの頃。売れない漫画家の「私」は、戦前の浅草を調べるうち、当時の不良少年グループ「浅草黄色団」を率いた神名火譲二老人と知り合う。
 神名火によれば、当時の浅草には他にヤクザの下請けもこなす「浅草黒色団」、美少女・小百合が頭目の「浅草紅色団」があったという。だがある殺人事件をきっかけに、神名火らは小百合の紅色団と共闘し、帝都一の繁華街・浅草で起こる怪事件を次々解決していく――。

◆すけみつ・ただし 1959年、東京都生まれ。都立工芸高校デザイン科を卒業。CM制作プロダクション勤務を経て、久保田眞二名で漫画家として活躍。05年「浅草色つき不良少年団」で第44回オール読物推理小説新人賞を受賞、作家デビュー。



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