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【NEW WAVE】
2007年3月31日 掲載
第5回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞 増田俊也さんに聞く

「見せ場は、お互いの子の生存を懸けた“母対母”の死闘です」

 受賞作「シャトゥーン ヒグマの森」(宝島社 1600円)は、「このミステリーがすごい!」大賞初の動物を主人公に据えたパニックミステリー。地上最大の野獣・ヒグマと、若い女性記者・薫が、互いの子の生存をかけて真っ向から対峙する。執拗で猛烈なヒグマのアタックは、まさにアニマルホラーの領域に突入する。

――女性記者・土佐薫と、秋の食いだめに失敗したメスのヒグマの恐るべき対決の物語。しかもこのヒグマはかつて人の手で飼われた経験があり、人、銃を恐れない。過去に失踪した人物たちの謎の死も盛り込まれ、熊に襲われる人物たちの中に殺人容疑者がいるという凝った仕掛けのミステリーでもある。
「北海道大学在学中の昭和62年に、知床の原生林伐採問題で、伐採反対の人々が木の幹に自分の体を縛り付けて抵抗する事件が起こりました。そもそもはそのとき自分が感じた、自然と人間の関係についてのなんとも居たたまれないほどの憤怒、切なさが原点になった物語です。また、ヒグマの成獣はワンボックスカーほどの大きさになるんですが、そのパワー、迫力はまさに生きたマシン。自然の造形物であるヒグマに対する、僕の畏敬の念も込めました」
――結局は人間の介入が原因で、物語のヒグマは人間を襲う。しかもその襲撃はとにかく執拗、残忍、冗談でなく頭から丸かじりのシーンも登場する。
「ハリウッド映画でいうと、僕は“ジョーズ”や“エイリアン”世代。圧倒的なパワーの生物に襲われる恐怖と、それでも人が恐怖を乗り越えて闘う姿勢には影響されました。でも日本のヒグマも相当怖い。1本の爪の長さは15センチほど。まるでサーベルで、怒らせたときの彼らのスピードとパワーは尋常ではない。それを何とか活字に落とそうと。通常の書き方では理解しにくいと思いましたので、ヒグマに食われる人の視点からのシーンも用意しました」
――結末は圧巻だ。女性主人公・薫が夜叉となって我が娘を守り通そうとする。
「人間が自然をコントロールしようとする不遜さを指摘したい気持ちは重々あるんですが、エンターテインメントとしての見せ場は母対母の死闘です。男なら音を上げるかもしれない、子をもつ母同士だからそこまで闘える、というシーンを描けました」

【作品概要】
 北海道のヒグマは最大450キロにもなる地上最大の野獣だ。“シャトゥーン”とは、冬眠前の秋の食いだめに失敗、雪の中をさまようヒグマのことをいう。しかもそれが子連れのメスのヒグマだったら……。
 冬にはマイナス40度の日も珍しくない北海道北端の大樹林。年末、鳥類学者の研究所に、北海道のテレビ局の記者・土佐薫と9歳の娘をはじめ、親族・学者仲間が集まった。だがそこにヒグマに襲われた密猟者が逃げ込み、人々は飢えたメスのヒグマによる大襲撃にさらされる。

▽ますだ・としなり 1965年生まれ。北海道大学中退。在学中は戦前からの寝技中心の柔道(七帝柔道)に親しむ。中退後、新聞記者に。本作品で第5回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞、作家デビューする。



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